ヨハネ研究の森は、私にとっての松下村塾
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2012年8月30日(日)更新
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「ヨハネ研究の森コース」との出会い
東京工業大学大学院 地球惑星科学教授 丸山茂徳
私がヨハネ研究の森コースを初めて訪れたのは、このコースができて3年目になる2003年のことです。当時、ヨハネ研究の森では大陸移動説の提唱者である「アルフレッド・ウェゲナー」をテーマとした学習を進めていました。私は地球内部の構造を解明する「プルーム・テクトニクス」を提唱していますから、その講義をしてほしいということで招かれたのです。
そして講義の当日、最初に私が話したことは、地球内部の話ではなく、私の生い立ちでした。たとえば私の子ども時代に、自分の育った町の山の向こうに何があるのか知りたいと思い、家族に頼んで連れて行ってもらったこと、そして私が山の向こうで何を見たのかということです。あるいは、学校の遠足で海というものがあるのだとわかり、その海の向こうには島があったということも話しました。
また、かつて私自身が「地球は丸い」ということを実感できずに悩み、金銭的な余裕がないにもかかわらず飛行機をチャーターしたことも伝えました。そのときはひたすら東へ東へと飛行機を飛ばしてもらったのですが、きちんと地球を一周して日本に帰ってくることができました。そうしてやっと、私は地球が丸いということに心から納得することができたのです。
こういう話をしているとき、ヨハネ研究の森の子どもたちが、一言も聞き漏らすまいと必死にペンを走らせてメモをとっていることに私はまず驚かされました。そして、講義の後の質疑応答では次から次へと私に質問が投げかけられ、終了予定時刻を過ぎても、いつまでも彼らの手は挙がり続けていました。さらに数日後には、彼らが講義を聞いて書き上げた大量のレポートが届いたのです。
私は、日本もまだ捨てたものではない、とこのとき思いました。それ以来、毎年ヨハネ研究の森を訪れて、自分の進めている研究についての講義をしています。
実のところ、ヨハネ研究の森に来る日が、私にとって一年で一番しんどい日なのです。子どもたちの関心や質問に答えられるだけの自分の準備をすることも大変ですし、彼らと本気で向かいあう心構えをすることも大変です。ですが、この日は私にとって、一年で一番充実した日でもあります。
ヨハネ研究の森は、私にとっての松下村塾なのです。かつて松下村塾が日本の未来を担ったように、暁星国際学園・ヨハネ研究の森コースの子どもたちがより大きなスケールで未来を担ってくれることを、私は心から期待しています。
(『3・11本当は何が起こったか:巨大津波と福島原発』(東信堂)より抜粋)
丸山茂徳
東京工業大学大学院理工学研究科地球惑星科学教授。名古屋大学大学院博士課程修了。スタンフォード大学客員研究員。東京大学教養学部助教授、東京工業大学理学部教授を経て現職。
約7億5千年前に、プレートの沈み込みとともに海水がマントルに吸収され始め、以来海水は減り続けているという独創的仮説を、岩石の高温・高圧実験の証拠とともに、1997年に発表、衝撃を投げかけた。「プルーム・テクトニクス」研究の世界最先端学者。 2006年 紫綬褒章を受章。
主な著書:『46億年地球は何をしてきたか』(1993年、岩波書店)、『生命と地球の歴史』(共著、98年、岩波書店)、『ココロにのこる科学のおはなし』(2006年、数研出版)、『「地球温暖化」論に騙されるな!』(2008年、講談社)『科学者の9割は地球温暖化CO2犯人説はウソだと知っている』(2008年、宝島社)『火星の生命と大地46億年』 (2008年、講談社) 『今そこに迫る「地球寒冷化」人類の危機』(2009年、ベストセラーズ)ほか多数。
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