立命館アジア太平洋大学の伊藤先生登場
2012年7月3日(火)更新
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去る5月24日(木)に、大分県にある立命館アジア太平洋大学(通称APU)アドミッションオフィスの伊藤健志先生が来校されました。
伊藤先生は、毎年ヨハネ研究の森にお越しいただき、大学について様々な角度からお話をしていただいています。APUは日本人が半分、海外からの留学生が半分という、とてもユニークな大学で、この不況の中にあって就職率が抜群に良い大学でもあります。

伊藤先生は海外生活も長く、国内の大学だけでなく海外の大学事情にもお詳しいため、グローバルな視点からヨハネ生の目を見開かせてくれます。
今回は『大学で学ぶ価値を考えよう』と題して、現代社会における大学の価値とはなにか、世界から見た日本の大学の価値とはなにか、そういう切り口でお話をしていただきました。


大学で学ぶ価値を考えよう


コモンセンスとはなにか

みなさん、「コモンセンス」ということばを知っていますか? そう。「常識」という意味です。「みんなが当たり前だと思っていること」。だけど、「日本の当たり前」は世界では通用しません。
日本で作って、日本で売って、それで経済が回っていたバブルの頃、トヨタの車が45秒に一台車が売れていた。その時期には、とにかくたくさん商品をつくるために「言われたことだけを言われたとおりにちゃんとやる人」が「よい」とされていた。だから、学校でちゃんと勉強をして、いい大学に入って、いい会社に入ってという人生設計ができていきました。

それが多くの日本人にとっては、今でも「当たり前」と思われています。
だけど、今はもうそういう時代ではありません。世界中の人と一緒に協力してやっていかなければいけない時代です。正解がない中で、全然背景の違う人たちと一緒にどうやって協調してやっていくのかということが求められています。「言われたことだけをちゃんとやる人」ではまったく役に立たない時代なのです。
時代は恐ろしい速さで変わっていますが、日本の学校の教育はバブル期となんら変わっていません。いい大学に入って、いい会社に入って、「こうしておけば大丈夫」という「正解」はもうないのです。一人ひとりがどうするのかを自分で考えられるようにならないといけません。


APUのヨハネ生たち

ヨハネ研究の森から今年入学した卒業生たちはAPUで非常に頑張って逞しく生活を送っています。レポートを書いてもらったので少し紹介します。

四月に入学した金子くんは、APUの新入生に課される課題、アジア80ヶ国について調べてレポートするという課題で、金賞を取りました。トップです。金一封が出る予定です。
彼はいろんな人と交流をしています。

同じく竹原くんも一時期ホームシックならぬ「ヨハネシック」になっているときがあったようですが、今はとても充実していると言っています。

三人目の森くんは、「ファースト」というプログラムに参加することが決まっているようです。これはいわゆる「集団遭難」のようなものです(笑)。
何人かのグループで、たとえば韓国なら韓国にいきなり行って、そこでサバイバルしなさいというアクティビティ。韓国語も全然話せない状態で放り出される。これはたくましくなりますよ。

二年生の下田さんは、入学したときは、どうしてこんなに自分はできるんだろう、と、あまりにも先生方の評価が高くてびっくりしていた時がありましたが、最近まですこし迷っていたようです。自分が何を学びたいのかということが分からなくなったと。
しかし、APUに茂木健一郎さんが来たときに話をして親しくなり、その後もいろいろとやりとりをする中で「文化経済学をやりたい」と思うようになっていったそうです。自分のテーマに重なるものを見つけ、それを深めるために留学しようと決意を新たにしたようです。今、APUの「スーパー留学コース」というとても厳しいコースで一生懸命やっています。

そして、四年生の田中くんは就職活動も終わり、彼はいろんな企業から引っ張りだこでしたが、日清食品ホールディングスに決めたようです。もう一つ、大手の超人気企業への就職もありえたのですが、彼は日清食品の創業者の安藤百福さんに魅かれて、そこに決めたと言っていました。田中くんは、一年目TOEIC 350点でした。TOEICはえんぴつ転がしてマークシート塗っただけでも300点行くと言われています。だから、はじめは英語は散々な状態だったということです。だけど、半年で750点を超えました。成績も4.0。オールA+です。彼は香港大学に交換留学もして、APハウス(学生寮)のリーダーもやっていた。通算GPA3.9。全学年のトップの成績です。大学院に行きたいと思ったら、どこだって入れる成績と実績。これは凄いです。
ちなみに香港大学は東京大学よりも世界ランクが上、アジアナンバーワンの大学です。


これから求められる人材

就職のモチベーションというのは実践の中からしか生まれません。どんなに勉強しても、自分がやりたい仕事というものは机の上からはひねり出せません。自分の世界を広げて、困っている人や状況を目の当たりにして、「これを何とかしよう!」というのが仕事なんです。「いい大学に入って、自分が何をしたいとか訳も分からず、とりあえずいい会社に就職したい」っていうのとは違うんですよ。
みなさんは、大学に何をしにいくのか。それは「自分とは全然違う価値観がある」ということを知るためです。正解がないところで、誰にも指示されなくても「白紙に絵を描ける」ようになるため。それが世界の「コモンセンス」です。

APUに来る留学生たちにとっての当たり前は、「母国への感謝と誇り」。自分が学ぶ機会を与えられたことに物凄く感謝している。そして、自分の国をよりよいものにしようと思っている。自分の国の運命は自分の頑張りにかかってると思ってる。そういう子たちと机を並べて学ぶことができる。彼らは勢いが違います。

世界の常識では「大学は英語で学ぶところ」。だから、「大卒」ということは、「英語で学ぶことができる」ということを意味するんです。大卒なのに「英語ができない」って言ったら、一体どうやって大学を卒業したのかと思われます。

また、「学歴」というのは「大学院以上」です。学位を取ると給料が上がっていく。大学院に入るためには、大学での成績が重要になります。どこの大学を出たかではなく、「自分がいた場でどれだけ貢献できたか」、「どれだけ参加できたか」という評価が重視されるんです。

だから、みんな必死です。悪い成績がつけられたら、教授に「どうして自分がAではないのか」と食い下がってきます。そうやってしのぎを削っているんです。
ちなみに、80ヶ国の人たちが一緒に暮らしているAPUの寮は、海外赴任よりもよっぽど効果があるということで、某有名企業の研修先として提携して社員を派遣してきています。
「自分で考え、自分とはまったく違う人たちと一緒に何かをつくりだしていく」ということができるようになりたいと思う、そういう人がAPUにたくさん集まっています。
そういう人たちがこれから求められる人材だと思います。