ヨハネ生たちはなぜ東日本大震災を学ぶのか
2011年12月9日(金)


ヨハネ研究の森コースでは、東日本大震災を受け、地震、津波、原子力、新エネルギー、復興などについて学んできました。 私たちはなぜ東日本大震災を学ぶのか、そして何を学ぼうとしているのか、横瀬先生にお話していただきました。


当事者意識を持つ

今年の4月からセッションで地震、津波、原子力、新エネルギー、復興と東日本大震災について 「これは一体なんなのか」と私たちは検討してきています。 いろいろな映像や本に触れて、たくさんの知識や情報を知り、それについて話をしたり、 文章を書いたりということはできるようになっています。

だけど、本当に重要なことは、今回の震災で、今まで自分が依拠していた「現実」が全然通用しないということに 気づいて、「一体どうしたらいいのか」と新たな現実を作り上げる、自分の「現実」を書き換えるということを やるかどうかということなんです。

そこのところに、ヨハネ生が入って行けるかどうか。それが「当事者意識」を持つということだと私は思います。

「当事者意識」というのは、当事者だからといって「ある」とは限らないものなんです。東日本大震災の被災者は、電気も、水道も、ガスも使えなくなってしまい「一体何が起こっているのか」なんて分からない状態。生き残るために必死で、考えている暇はないんです。

私は、震災直後から宮城県の利府にある自宅で生活していたけれど、「こんなことが本当に起こるの?」 と思うような光景を前に、一体何が起きているのか全く分かりませんでした。 そしてさらに原子力発電所の事故でしょう。分からないことだらけ。

そんなとき、震災から一週間で本当にありがたいと思ったのは、しばらくして『日本復興計画』という本に まとめられた大前研一さんのYou Tubeの映像。

電気が復旧して、インターネットでその映像を観て、私はその映像を通してなんとか見通しをつけることがで きるかもしれないと思った。 何が起きているのか当事者よりも分かっていて、こうしていけばいいのだということをわずか1週間で描いてしまった。

この人は、「当事者意識」という観点で言えば、実の当事者よりも高い「当事者意識」を持っている。 これは凄いことですよ。そういう優れた人が何人か出てきた。

堺屋太一さんが関東大震災の復興をした後藤新平を踏まえて「復旧と復興は違う」ということを言ったり、 孫正義さんが義援金を100億円寄付して、「新エネルギー財団」を作ったりと。

この人たちに共通しているのは、当たり前だと思っていた「現実」が崩れてしまった。 だから、それをもう一度作り直そうとしているということです。


崩れ去った「現実」

うんと具体的に言えば、まず電気も水も来ないでしょう。 それも2、3時間じゃなくて、10日とか1ヶ月ぐらい来ない。

トイレ行きたくても今は全部水洗だから、水がないと流れない。 だけど我慢するわけにもいかない。利府はまだ山の方に行けば茂みの中でってできるからよかったけれど。 もし東京だったら、そうはいかないでしょう。トイレ使えなくなったら一大事ですよ。

それで、改めてね、食べるもの食べる、出すもの出すという当たり前のこと。 これが滞ると大変なことになるんだと。 料理をするために火を燃やすのだって、今は家の中にかまどなんかないでしょう。 マンションの人は庭もないしね。電気やガスに頼らないで火を起こすというのだって難しい。

今回のことが首都圏で起きたら大混乱になりますよ。 2000万人いて、流通もストップしたら、いくらお金を出しても食べるものは手に入らない。 仮に手に入っても料理することもできない。 もちろんトイレも使えない。それが1ヶ月、2ヶ月続いたら、ほとんど生きていけません。

電気も、水道も、ガスも、流通も「滞ることはない」という前提でみんな生活しているでしょう。それが「現実」。 今回の震災で、その前提が崩れたんです。ライフラインが「滞ることはない」という前提で、都市化してきて、その結果、「自給自足できない」というところまで来てしまっている。このままで本当によいのだろうかっていうことですよ。 よくないとしたら、一体どうすればいいのか。新たな「現実」を自分で作り出さなくちゃいけない。

お金があれば何でも手に入るって思うでしょう。
だけど、もし首都圏で大震災が起きたら、
いくらお金があっても何も手に入らないですよ。

ヨハネ生の「学び方」

「現実」を再構築するということは、「新たな関係」を作り出すということです。 だから、自分の「生活」や「意識」を変えないでおいて、頭だけで「現実」を再構築するなんてことはできません。

孫正義さんは、今回の震災を通して、私たちの生活を支える電力というインフラが電力会社に「一元化」して 依存している状況に強い危機感を持ったと言います。 そして、どうすればいいのかと考え、あっという間にビジョンを描いて実行していった。新たなものを作り出している。

太陽光発電と送電網を整備するという数兆円規模の途方もないスケールだけれど、 「そんなの大したことない」って言ってやっていくでしょう。凄い事業家というのはそういうものなんです。

私もささやかだけれど、「現実」の書き換えをやっているわけですが、大変ですよ。 自分ができることはなんなのか、それをできると思ったら徹底的に検討していかなければいけない。

ヨハネ生が大震災を検討していったら、そういうところにいくでしょう。 単に知識だけ増やして「ああすればいい」、「こうすればいいんだ」って評論家みたいになるんじゃなく、 自分の生きている「現実」を書き換えていこうとする。

そういう学び方をしているヨハネ生は、自分が学ぶことと生きるということがつながっているからみるみる 変わっていくんです。これは普通の学校の勉強の仕方では絶対ありえない驚異的なことですよ。

私たちは、東日本大震災をただ勉強しているわけではありません。「現実」を再構築しているんです。