暁星国際小・中・高等学校 Gyosei International School
ヨハネ研究の森コース St. Johon's School
エジプト文明から考える
2010年11月10日(水)
11月10日、帰省日前日セッションでは、NHKスペシャル「サハラ砂漠の岩絵 エジプト文明の起源に迫る」と ディスカバリーチャンネル「エジプト王朝滅亡の謎」という二本の映像を観ました。 その後、これらの映像からどのようなことを考えていくことができるのかお話がありました。
歴史の区切りは暫定的なもの
横瀬
今日観た映像は、エジプト文明ができるきっかけのところと、 ピラミッドが造られていた古王国時代の末期にあった大飢饉についてでした。
この古王国とか、中王国、新王国といったエジプトの時代区分というものは、本を見れば整理されて書かれていますが、 これは、考古学者や歴史家が後から付けた名前でしょう。当時の人たちが、「はい、今日から中王国時代です」 なんて言ってやっていたわけではない。
発掘されたものが明らかに違う時代のものだというとき、便宜上、区切りを付けるためにつくったものだから、 何年から何時代とぴたっと区切ることはできないわけです。
だから、その区切りを絶対化してしまうことがないようにしないといけない。
これは、仮説だということです。発掘されたものや、いろいろな情報を総合してみて、今のところ、 「とりあえず、そう考えていいでしょう」という範囲のもの。いつそれを覆すような証拠が出てくるか 分からないものなのです。
そう考えてみると、単に鵜呑みにするのではなく、どんな証拠に基づいて主張されているのかということを きちんと考えてみることが重要になる。みなさん、映像を観るときに、そういう見方をしてみるといいですよ。 何を根拠にしてそれを言っているんだろうかと。
そして、根拠がはっきりしなかったり、よく分からないというときは、自分で調べてみる。 そうして、レポートを書いて発表してみるといい。そういうことをぜひやってみてください。
文明と肥沃な大地
そして、もう一つ検討しなければならないことは、河口です。 大きな川は、みな海に流れ着く。上流で雨が降って、増水して、氾濫したりしながら大地をつくっていく。 肥沃な三角地帯と言うけれど、これは一体どういうものなのか、分かっているような分からないような感じがするでしょう。 これは、調べてみる必要があるでしょう。
大地には、草木が生えているけれど、これは地球が出来たときからもともとそうだったのかというと、 そうじゃなかったことが分かっているわけです。大地というのは、何億年もかけて耕されてきたのです。 一体、誰が大地を耕したのでしょう。
ミミズです。ミミズが土を食べて、排泄する。この排泄された土には、とても栄養がある。 肥沃な土地になるわけです。今、生き物が住んでいる大地は、何億年もかけてミミズが耕したものです。
もし、ミミズが大地を耕していなかったら、草木も生えませんし、人類も生きてはいけません。 ダーウィンはミミズを研究して『ミミズと土』という論文を書いています。 これは「へぇ〜」と唸ってしまうような研究ですよ。それから、生態心理学者のギブソンもミミズを研究しています。 ミミズがいなければ、生き物は生きていられない。それぐらい重要な生物。 一生かけてミミズを研究して、一体何をしているんだろうと思ったら、そういうことだったんです。
河口の肥沃な大地三角地帯というのは、川の土砂が運ばれてくるところです。 これは、結果としてミミズが土地を耕すのと同じような効果があるということですが、 これをちょっと調べてみてください。どうして黒土ができるのか、どこからやってくるのか。 よく分からないでしょう。
四大文明は、みんな大きな川のところで発生していて、川が氾濫して肥沃な土がやってくるということが 起こっている。牧畜をするには、草がないといけない。その草が育つ土地が必要。遊牧をしたり、 狩猟採集をするにしても、耕された土地が必要。大きな文明が栄えたところというのは、 みな独特の耕され方をしている。これを調べてみてください。
エジプト文明の興亡
それから、文明が崩壊するときは、土がダメになってしまったときだということ。文明を研究している人は、みんなそれに言及しています。そうすると、エジプトというのは、どうして文明が栄えたのかというのをもう一度きちんと検討してみることが必要でしょう。
農業もそうです。文明のあるところでは農業が行われるけれど、農業は、重労働で、大変。なぜそんなことを始めたのでしょうか。嫌ならやめればいいけれど、そうはしない。それから、農業はみんなと一緒に仕事をしなければならないから、気に入らない人とも一緒にいなければならない。気に入らないからといって、どこか違うところへ行くということもしないで、一年先の収穫をじっと待っている。
今我々があたり前に考えたり、行動したりする仕方というのは、農業が始まってから身につけてきたことかもしれない。
そして、エジプトと言うとピラミッドばかりが話題になるけれど、そのピラミッドがパタッと造られなくなる時期があるわけです。「エジプトはナイルの賜物」という言葉があるけれど、一体ナイル川に何があったのだろうか。
これは、調べていくとナイル川の渇水があったということが分かってくる。何十年という単位で雨が降らなかった。海流ベルトが止まってしまったのが原因じゃないかと言われている。
ナイル川は、毎年毎年氾濫を繰り返していた。その中で、人々は農業をし、家畜を飼って生活していたわけです。けれど、そういうことが全部できなくなってしまって、人が生きていける空間でなくなってしまったんだっていうわけですね。
もし、そうだとすると、どういうことになるのか。アフリカの気候がどう変化しているかというのは、かなり研究がでてきているから、それを調べてみる。そうすると、ホモサピエンスがアフリカを出て世界中に拡散していったのは、なぜ出て行ったのか。森がサバンナになって、木から降りたと言うけれど、どうしてどんどん広がっていったのか。この間そういうことを断片的に検討しているけれど、休みの間に考えてみてください。
定住革命から、文明の誕生へ
みなさんがそういうことを考えるときに、西田正規先生の『森を追われたサルたち』を読んで、自分なりにまとめてみるといいですね。
人類が、なぜ森を追われていったのか。森を追われてから、どうしていったのか、対談形式で書かれているから読めると思うんです。この本をきちんと読んで、まとめてみる。
それから、『アメリカ大陸史を読み直す』、『一万年の進化爆発』、この二冊も凄く面白いですよ。買って損はないですよ。「文明が進化を加速した」とか「現生人類がクリエイティブな活動をし始めたのはなぜか」、「農業が人間をどう変えたのか」なんてことを扱ってるの。非常に刺激的だから、課題をこなして余裕のある人は読んでみるといいですよ。
定住も、農業も、文明を作るのもやりたくてやったということではないのかもしれないの。そうせざるを得ない何かがあったと考えて、一体何があったのだろうかと調べて行く。中間休暇に一度自分なりに整理してみてください。