シリーズ英語ゼミ 「表現を覚えて使う」
2009年7月10日


This is a pen. 「これはペンです。」なんて、言わないように!

 英語は、英語で考える。そのためには、たくさん使うこと。初めは正確に、正しく使うことよりも、とにかくたくさん読み書きしましょう。2009年7月10日の英語ゼミの様子をまとめました。


言葉の定義

横瀬 おはようございます。先週とその前後のところで、分からないところや質問があったらどうぞ。もう数字や前置詞は大丈夫ですか?
保科 細かいことですが先週やった前置詞の話で、日本語で「上に」というのが、英語だと「on」、「above」、「over」とあって、どうやって使い分けたらいいのかという感覚のようなものがイメージできないのですが。
横瀬 それはすごくいい質問ですが、とても微妙な質問で、それをやりだしたらきりがない。「保科先生の近くに鈴木先生がいます」と言うのと「保科先生のそばに鈴木先生がいます」と言うのでどう違うのかという区別ができますか?
高雄 はい! 私は「そばに」の方が近い気がします。
鈴木 わかった! 「そばに」は精神的な感じがしますよね。愛する人に「君のそばにいるよ」というのは身も心も一体になっているという感じがしますが、「君の近くにいるよ」というのは、なんだか距離的に近いというだけのような気がする。
横瀬 なるほど。鈴木先生や高雄先生のような経験豊かな方々はそういう微妙な違いを言葉に込められるかもしれないですね。しかし、一般的に言えば、「近くに」でも「そばに」でも大体同じ意味で使いますよね。前後の文脈の中で「こういうことではないか」と見当をつけて使っているんです。もちろん、微妙な違いというのはありますよ。しかし、保科先生の質問にあったような非常に微妙なニュアンスの違いというものにこだわってしまうと、「どっちが正しいんだろう? 」ということに焦点が移ってしまって、使うことができなくなってしまうんです。そういう細かい部分の正確さにこだわることよりも、今は「だいたいそういう感じ」というイメージでもって、どんどん使っていくことの方が大切なのです。
 みな、ことばを使うときに明確に定義して使っているわけではないでしょう。たとえば、「自由」って何ですか?別に辞書を引いたわけではないけれど、大体こういう意味かなと思って日本語だって使っているでしょう。そういう意味では、私たちはかなりいい加減に日本語を使っています。しかし、相手がこちらの言いたいことが何なのかということを捕らえようとする気持ちが積極的にあれば、言葉は通じる。そうでないと、すぐ喧嘩になりますよ。
よく「プレモ」という架空の果物の話をしますが、「プレモの色は地中海のブルー」と言って、みな「ふんふん」と分かったような分からないような顔をしているけど、思い浮かべている色は10人いたら10人とも違う色を思い浮かべていますよ。それで、「自分の思い浮かべてる色が正しい、お前のは間違っている」なんて言ったら、すぐ喧嘩になります。
 「言葉の意味は言葉にあるのではなく、それを使う人の心にある」ということです。相手が何を言わんとするかということをとらえることが非常に重要。「地中海のブルー」と言ったら「日本海のブルー」ではなく、「太平洋のブルー」でもなく、「地中海っぽい」範囲だったら、それでいいかということなのです。そういう風にして、だいたいでいいからとにかくたくさん使うということが非常に重要です。


英語は英語で考える

 みなさんが持っているPicture Dictionaryの前置詞を扱っているところで、「Cat#17 is in front of the shelves.」というのがあるでしょう。これは、「in front of〜」で「〜の前」という意味です。猫が棚の前にいますと言っているのだけれど、これは「before」も「前」でしょう。日本語ではどちらも同じ「前」だけれど、これを一緒にしてはいけません。
 「in front of」は場所的に前。たとえば、「七時前」というのは場所ではないでしょう。これは時間。それなのに、「I get up at in front of 7:00.」 なんて言ったら、アメリカ人はビックリしてしまう。それは、違うんです。日本語で同じだからといって、それを英語でも同じように使おうとするとうまくいきません。
 英語の言葉が持つイメージを、日本語に一対一対応させて覚えるということには限界があります。英語は英語でイメージを作る。その途中で日本語を手がかりにしてイメージを作るというのはいいですが、よくある単語帳を覚えるように英語と日本語で一対一対応させて覚えて満足してはいけませんよ。


This とThat

 This is a book. は、「これは本です」と普通は教科書に説明されています。それで、複数の場合。複数あるときは、s を付ける。けれど、This is books. にはならないんです。ThisはTheseになる。Theseというのは、Thisにs付けて、Thissとなってしまうと言いづらい。だから、Theseになる。そして、is はareになります。それで、These are books.となるんです。
 Thisは人にも物にも使います。だから、「これは」なんて覚えてはいけませんよ。This is Mr.Suzuki.と言われて「これは鈴木です」と言われたと思って、「人のことを『これ』と言うのは物扱いしてる。失礼だ! 」なんて怒らないでください。Thisは「これ」ではありません。Thisは「話す人の近くの物や人を指す」言葉です。そういうイメージをしっかり持ってください。
 すると、今度あっちの方、ここから見て遠いところにいる人。そういうときは、Thatを使います。 That is Mr.Kobayashi.このThatは「あれ」ではありませんよ。遠い物や人を指すのです。近くのものがThisで遠くのものがThatということです。
 それで、複数あるときは、それぞれThisはTheseでThatはThoseになります。そして、is はareになります。これはとても簡単だけど、絶対に使えるようにならないといけませんよ。
 みなさん、こうやって覚えたらどんどん英語を使っていってくださいね。英語は使わなければ使えるようになりません。だから、今すぐ使いましょう。