ヨハネ研究の森コースが、朝日新聞2007/4/15の朝刊に掲載されました。
「自学」で興味追求
学年・教科の壁取り払う
教科ごとの授業はない。しかも小学4年生から高校3年生が一緒に勉強するって、想像できますか?
それを実践しているのが暁星国際学園のヨハネ研究の森コースだ。114人が寮生活をしながら学ぶ。
普通の教室の4倍ほどの広々とした「研究室」。机が向かい合わせに並び、観葉植物が部屋の所々に
ある。壁際には本棚がズラリと並ぶ。言語学や経済学などの専門書から、参考書、文庫本、洋書もある。
癒し系の音楽が流れているが、これは「自学」の時間の合図でもある。
「今日は算数の問題集をやった。(昨年)4月から算数は小学4年生、国語は小学1年生からやり直
している。(中2男子)と教科学習の基礎基本を徹底する生徒もいれば、英文雑誌にあった歴史の記事
を読んだり、リポートをまとめたりする生徒もいる。
午前と午後、寮に戻ってからの計3回、各2〜4時間の学習時間があり、多くは自学に費やされる。
先生の助言を受けながら自分で計画を立てる。英語を一日中勉強するもよし、数ヶ月間集中的に数学に
取り組んでもいい。
興味のあるテーマを掘り下げる「個別研究」に力を入れる生徒もいる。
中1の今井龍之介さんは昨年からクワガタの研究に熱中している。遺伝の仕組みに興味があるといい、
「クワガタから世界を学んでいるんです」と話す。
高1の早川紘平さんは、西田幾太郎の「善の研究」など、哲学書がお気に入りだ。「根本を見つめ直
さないと、何をやっても身につかないですから」
自学自習とは対照的な「セッション」という時間もある。
3月上旬のある日、全員が「共同研究室」に集まり、昨年度のテーマだったヘレン・ケラーの映画を
改めて見た。
「今日また新たな発見があったんじゃないかな」
大下宏和先生が問いかけた。
「ジェスチャーが多いと改めて思った」
「表情やジェスチャーは万国共通か。泣くのはいつ学ぶのか」
「ボクは生まれてすぐに、母親が少しでも離れていると泣いていたらしい。困ったことを伝える土台
はあると思う」
対話を積み重ねて理解を深めるのが狙いだ。週1、2回の割合で開かれる。
発言は高学年が目立つが、小さい子も真剣にノートを取る。終了後は、各自が理解したことを自分の
言葉でまとめて提出する。
「何でもいいから発言すればいいというものではない。小さい子はじっと聞いてためている」と永森
貴子先生。こうした「徒弟的な学び」が設立の基本にある考え方だ。先生や先輩のメモの取り方や読ん
でいる本をまねすることも勧められている。
今の学校制度は「知識をいかに伝えるか。受け止められる生徒は○。そしてどれくらい理解できるか
をテストするというやり方」と横瀬和治先生は話す。そこからの脱却を目指すのだという。
野口佳正さんは東北の私立中に入ったが受験型の学習になじめず、中2で転校。「自主的に取り組む
ことを学んだ」という。1年前、都市工学や環境問題を学ぶために早稲田大学理工学部に進学した。
弟の卓也さんは今春卒業。「塾の宿題もやったことがない」ほどの勉強嫌いだったが、ヨハネでは年
間500冊の読書をし、高2で大手出版社の小説対象に入選した。「小説がメディアとしてどういう役
割をするのか」を慶応大学環境情報学部で学ぶ予定だ。
海外の大学を目指す曽根憲次さんは「合格したからといって『ヨハネ生」になるわけじゃない」と強調
する。
ではヨハネ生って何?
すかさず卓也さんが答えた。「ヨハネ・スピリットか・・・常に疑うことかな。今のあり方がいいの
かってことさえ疑う」
9日の始業式。横瀬先生は新入生28人を含めた全員を前に、新学期にあたっての心構えを話した。
「見たり、聞いたり、触れたりしたことを、必ずその日のうちに振り返って自分の言葉でまとめること。
ウソだと思ってやってみると、驚くような文章が書けるようになる」
新入生の一人、中3の下田奈々枝さんは表現力が重要な役者になるのが夢だ。
「考えを文章にするのは苦手だけど、一生懸命やっていかなくちゃ」
ヨハネ生への一歩を踏み出した。
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