グローバル教育研究会「東アジア文明圏と『日本』の誕生」ご報告
11月25日(土)、東京ガーデンパレスにて
開催された第5回グローバル教育研究会・
「東アジア文明圏と『日本』の誕生」は、
多くの皆様のご参会・ご協力を賜り、
盛会のうちに終了いたしました。
当日のプログラムは、以下のリンク先より、
eBook形式でご覧いただけます。
研究会は、参議院議員・進藤金日子先生による
特別提言からはじまり、私たちの暮らす
「日本」の起源が、歴史学・地球惑星科学の
両面から検討されていきました。
まず、宮脇淳子先生は、「日本」の起源について、
中国大陸・韓半島・日本列島を、
いわゆる華僑をはじめとする人々が
いかに動き、そこで何が起きていったのかという
歴史学の観点から迫ってゆかれました。
そこで描かれたのは、一般的な教科書で習うような、
農耕が剰余を生み、それが交換につながっていく…
という文明論とはまったく異なる、
人間が動き、交わるなかから生み出されていく、
変化と活力に満ちた古代東アジア文明圏の姿です。
そして、この文明圏の中から「日本」という国が
形づくられる過程が構想されていく姿に、
ヨハネ生たちは皆、大きな知的刺激を受けていました。
また、丸山茂徳先生は、地球史全体を眺める
広大な時間・空間認識をもとに、
環境変動が人類にもたらす変化のなかから
「日本」が成立していく状況を考察されました。
地球の寒冷化と温暖化が、人類の大規模な移動に
結びつき、それが文明の興亡に大きな影響を与える、
という観点は、丸山先生の文明論の大きな特徴です。
人類史上の文明の誕生や滅亡がなぜ発生するのか、
歴史を動かすエネルギーとは一体何なのか、
という点について、地球惑星科学者である
丸山先生は、人の意図を超えた地球環境の影響を
力強く語ってくださいました。
そして、人間が動き、交わり、国が成立していく中、
東アジア地域の各地で産出される資源と文明が
結びついて、「黄海文明圏」と呼ぶべき巨大な
交易・物流網が現れた、と丸山先生は語ります。
この古代東アジア地域で発生した状況は、
私たちが「文明とは何か」とその本質を問うとき、
非常に大切な要素となるはずです。
過去の「日本」誕生の時代に何が起きていたのかを知り、
これからの世界で起きうる事態について考えはじめた
ヨハネ生たちの表情は、みな活き活きと輝いていました。
こうした講演をつなぐ役割を果たすのは、
コーディネーターである横瀬和治先生と、
その教え子であるヨハネ生たちです。
東アジア地域の広範囲を結びつけた文明圏は、
ただ人が移動したから成立するものではないはずです。
もし、「漢字」という文字に注目した場合、
そこから何が見えてくるのでしょうか。
ヨハネ生たちは、共通語の成立条件を検討しながら、
秦の中国大陸統一前後に、漢字がどのような状況にあり、
それが共通語として東アジア文明圏をつなぐ可能性は
いかなるものであったかという報告を行いました。
そして、横瀬先生からは、世界の東西を問わず、
文字、あるいは書かれた言葉(書き言葉)が
文明圏の発生に大きな役割をもっていることが、
東洋の漢字、西洋のラテン語の比較から伝えられました。
これらの知見を総合して眺めていくとき、
私たちは、「日本」という国の成立事情のみならず、
地球上で生きる人間の営みそのものに迫っている、と
強く感じることができます。
この世界の過去を知り、私たちの今を考え、
これからの未来を思い描く今回の研究会では、
ポール・ゴーギャンの
「我々はどこから来たのか、
我々は何者か、
我々はどこへ行くのか」
という問いが、まさに発せられていたのかもしれません。
それは、変化し続ける世界のなかで、
ヨハネ生たちが自らのアイデンティティや
生きる基盤をどこに据えるかといった
大きな課題に結びつくものであると思います。
この充実した研究会の開催にご協力いただいた
丸山茂徳先生、宮脇淳子先生、進藤金日子先生、
そして、ご来場いただいた研究所の先生方、
多くのご支援を賜りました保護者の皆様に、
心より感謝申し上げます。