英語ゼミ「受験英語と本当の英語」
2009年5月29日


 教科学習の進行状況を確認するため、5月18日から22日までかけて英語・数学・国語の学力・学習状況調査を行いました。その英語の問題に帰国子女が大苦戦。英語圏で生活してきた彼らがなぜ苦戦したのか、一般的な学校で求められる英語とヨハネ研究の森が目指す英語の違いに迫ります。


ネイティブのように英語を使う

横瀬 こんにちは。それでは、英語ゼミを始めます。この間、英語の学力・学習状況調査をしましたが、それはたとえば英検やTOEFL、TOEICといったようなテストに近いものでした。TOEFLで何点取れればアメリカの大学に留学しても大丈夫とか、英検一級を持っていると大学に無試験で入れると、一般的にそういうテストがもてはやされています。
 英語ができるということが、イコール「英検やTOEFLで高い点数が取れる」ということだと思われているのではないでしょうか。けれど、日本で英検一級を取ったり、東大に入るぐらい英語ができる人が、アメリカの大学に行って全然授業についていけないというようなことがよくあります。
 それはなぜかというと、たとえばここにアメリカの学生が使う社会科の教科書がありますが、すごく分厚いでしょう? アメリカの大学で学ぶには、毎週何冊もこういった本を読んで、自分でまとめたりすることが必要。そういうことは、受験英語で少々英語をやっていてもできません。留学する前に、英語で本を読んだり、まとめたりすることが当たり前にできるようになることが本当は必要なのです。


留学すれば英語ができる?

 日本から留学する人の中には「留学すれば英語ができるようになる」と勘違いしている人がたくさんいます。留学して成功する人は、日本にいるときに英語で学ぶことができるようになっている人です。たくさんの本を読んで、自分のことばでまとめる。そういうことが英語で当たり前にできるようになっている人は、アメリカだろうがどこだろうが行ってちゃんと学ぶことができます。
 「英検一級だから大丈夫だ」とか「TOEFLのスコアが高いから大丈夫だ」と言って留学すると、大変な苦労をすることになります。英語で学ぶということは、英語で当たり前に本を読んだり、レポートを書いたりするということです。切れっぱしのような英文を読んで文法的に正しく理解できるかどうかは、膨大な英文を読んで、自分なりにレポートを書けるということとは別の能力なのです。
 ヨハネ研究の森にも、帰国子女の人たちがいて、その人たちは今回のテストで苦戦していたそうですが、この前、ネイティブに同じ問題を解いてもらいました。「to不定詞」の用法を分類する問題でしたが、「違いが分らない。納得できない」と言っていました。
 私たちが、日本語の文法をろくに知らなくてもきちんと文法どおりに使えるのと同じですね。「来る」は「くる」と読みます。「こる」とか「きる」とは読みません。カ行変格活用を知らなくても、きちんと正しく日本語を使えています。でも、「カ行変格活用について答えなさい」なんて言われたら、とまどってしまうのではないでしょうか? 文法を知っていることと、ことばを使うことができるということは別の能力なのです。
 野球のルールを知っていたって、実際にやったことがなければイチローみたいにプレーすることなんてできないでしょう? バットの持ち方やスイングの仕方を勉強しても、それを正しくできることにはならない。それができるようになるためには、何度も何度も繰り返し練習する必要がある。
 英語も同じです。英検やTOEFLのようなテストで、英語の使い方を勉強しても、それを繰り返し繰り返し使うと訓練をしないと、使えるようにはならないのです。


ことばを身につけるプロセス

 生まれたときは、誰だってことばを知りません。お父さんやお母さん、周りの人が話をしているのを見聞きして、いつの間にかことばを覚えていきます。三才ぐらいになると、お母さんが言うことは大体分るし、たどたどしいけれど話をすることもできる。ほとんどの人類がそうしている。話しことばはそうやって自然に身について、使うようになる。  そして、お母さんに本を読み聞かせしてもらったりして、何度も何度も聞いているうちに、すっかり内容を覚えてしまう。すると、文字は読めないけれど「本を読む真似」をしたりする。どうやら文字に書いてあるものを読んでいるんだということが分り始めると、その文字を読もうとするようになります。
 小学生になって、あいうえおを教わって、一つひとつ覚えていく。既に自分が知っていることと文字を結びつけて学んでいきます。自分の名前などをひらがなで書いたりできるようになる。それは皆大体やるようになるけれど、だからといって自分で文章を書いたり、本を読むというふうには簡単にはいかない。それは書きことばの世界。書きことばを身につけるにはまた別のプロセスが必要なのです。
 ヨハネ研究の森では、毎日自分がその日に見たり聞いたり感じたり考えたりしたことを自分のことばでまとめるということをするでしょう。これは、書きことばを身につけるためのトレーニングなのです。


書きことばの世界

 書きことばを身につけることができている人というのは、なかなかいません。たとえば、見ず知らずの人に対して即興で話をして下さいと言われてもなかなかできないものです。こうやって、話をすることは一見簡単そうですが、普通はできません。でも、ヨハネ生は、そのぐらいのことはできるようになる。これは、普段から書きことばを使う訓練をしているからです。
 これは、英語でも同じ。たとえば、話しことばの英語は英語圏で生活している人なら誰でも身につけているけれど、書きことばの英語を身につけている人は少ない。きちんと本を読んだり、文章を書いたり、人前でプレゼンテーションするということは誰でもできることではないのです。
 学校は、基本的に書きことばの世界です。それは、その場にいない人が読んでも分るような書き方や話し方がされている世界。「めし」、「腹減った」といった話しことばは、家族の中では通用するけれど、他人には通じません。他人に通じるようにするには、「お腹が空いているので、何か食べるものを頂けませんか」と文章を書くように話すことが必要です。書きことばを身につけましょう。
 英語をネイティブのように使うというのは、ペラペラ英語でおしゃべりができるということではなく、人の話を聞いて理解したり、自分の考えをまとめ、表現することができるようになるということです。ネイティブでも書きことばができない人はたくさんいます。皆さんが目指すのは、書きことばの英語を身につけることです。
 ヨハネ卒業生の小泉さんは、今トロント大学の四年生、今年もヨハネを卒業した生徒がオレゴン大学に二人入学します。近々セッションも英語でやっていけるようにしたいと思っています。「今日の学習」もぜひ英語で書いてみてください。そういうことをしている日本人はなかなかいません。やるんだったら徹底してやりましょう。ちょっとやって、それっきりっていうのはダメですよ。スポーツと同じです。


まず語彙を増やす

 書きことばの英語を身につけるために、まず、英語のことばを覚えましょう。この本を見てください。これはピクチャー・ディクショナリーと言って、ことばを絵で表している辞書です。
 このページには見たことがある野菜が載っていますが、英語でなんて言うか知らないでしょう。自分が普段見たり、使ったりするものについてのことばを色々知っていると、とても役に立ちます。今日の学習を書くのにも使えることばがいっぱいある。
 この辞書には4000語載っているそうですが、1日に20個覚えたら約半年で全部覚えられるでしょう。ヘレン・ケラーもそうやってことばを覚えていきました。自分が手に触るものの名前を覚えていって、どんどん知っていることばを増やしていったのです。ヘレン・ケラーと同じようにやってみましょう。
 「これは英語で何ていうのだろう」と自分が使う英語をどんどん仕入れていく。そして、どんどん使っていく。覚えようとしなくていい。今日の学習を書くときに新しく覚えたことばを使ってみる。そうすると頭に入っていきます。何度も何度も徹底して英語を使っていく。そうすることで、書きことばの英語を身につけることができるのです。