『ヨハネ研究の森の「学び」とはなにか』シリーズ その1
2009年4月24日


「自学力」と「要約力」

 今年(2009年)の4月、ヨハネ研究の森の代表である横瀬和治先生が、入学したばかりの新入生を交えて、学びの本質は「自分で学ぶ」というところにあるという話をしました。その内容の一部を抜粋してご紹介します。



風邪は薬では治らない

 巷ではインフルエンザが流行っています。ヨハネ研究の森でも感染した人が出て一週間ほど寮内学習が続いていました。喜んでいた人もいるかもしれないし、外に出られなくて辛かった人もいるかもしれない。そして、今みんな元気になって戻ってきて、顔を合わせることができました。そして、本日さっそく健康に関する映像を見ました。
 その映像の中で、風邪は薬では治らない、風邪を治すのは免疫の力だということが言われていました。免疫は、絶えず侵入してくる菌や微生物と戦っているのだ、と。
 風邪をひいたら風邪薬を飲めばいいと思うけれど、それは症状を緩和しているだけで、薬が風邪を治しているわけではないのです。
 免疫が病気を治すと言うけれど、免疫とは一体何なのでしょう? 先ほどの映像で「免疫細胞が異物を取り込む」と言っていたけれど、人も動物もみんな自分以外のものを食べて、消化して、栄養を取り込んで生きている。異物を取り込むということは、生きていく根本的なことなのです。


異物を取り込むこと

海外に行って、その土地の水を飲むとお腹の調子が悪くなるというようなことがあります。これは、普段飲み慣れていないために、免疫がなくて取り込めなかったということなのかもしれません。一度、お腹をくだすとあとはたいがい大丈夫になります。異物だったものを取り込めるようになっていくのです。消化をするということは、異物を自分の中に入れて、違和感がなくなるようにすることです。


自己治癒力で治る

 生物は、自分以外のものを取り込むということを絶えずやっているので、ウィルスや菌も絶えず取り込んでいます。ガン細胞だって毎日生まれています。免疫の力でガン細胞が小さいうちに取り除かれているから健康でいることができるのです。そのように、自分で自分を治す力を自己治癒力と言うけれど、生物はそういう力をもっているのです。


自分で学ぶ

 人間には、病気になっても自分で治す力があるように、自分で学んでいく力があります。赤ちゃんは誰にも教えてもらっていなくてもオッパイを吸うことができるし、学校の授業のように勉強したわけでもないのにいつの間にかことばを覚えていきます。また、本当に知りたいと思ったことはどんなことをしてでも知ろうとするのが人間の性(さが)です。 やめろと言ったってなかなかやめることができません。
 しかし、現代は、好むと好まざるとにかかわらず、学校に行き、授業が分らないと、塾に行って教えてもらわなければ勉強できないと言ったりする。テストで知らない問題が出てくると、「まだ教わっていないのでわかりません」と言い訳をしたりする。
 本当に勉強する人は、自分でやっていきます。誰も教えてくれなくても、学んでいきます。できない理由をあれこれ探すのではなくて、どうしたらできるか考えて、自分でやっていく。それは、本当は誰もが持っている力なのです。
 「勉強」あるいは「学ぶ」というと、すぐに学校やテストを思い浮かべるかもしれませんが、箸の使い方や二本足で歩くということだって、「学ぶ」ということなしにはできるようにはなりません。みなさんは、それができるのだから、自分で学ぶ力「自学力」を持っているはずです。
 また「学び」とは本来そういうものなのです。そうやって学んでいくときに、学びの醍醐味にも触れることができるのです。決して「学び」は仕方なくやらされるものではないのです。


要約・再構成

 そこで、皆さんが持っている「自学力」を、学校の勉強に活かすためにはどうしたらいいのか考えてみてください。これには秘訣があるのです。
 私は今でもそうですが、暗記をしたりするのが苦手で、教科書を読んでもなかなか頭に入ってきません。だから、テストになると、いやでいやで仕方がありませんでした。それでも、テストは避けて通れない。悪い点数を取れば母親に怒られる。それで、あるとき、カンニングをしようと思ったのです。
 新品の鉛筆を縦に割って、芯を抜いて、そこにカンニングペーパーを仕込むという作戦でした。芯を抜いて、一ダースの筒を作るというところまでは完璧だったのですが、肝心のカンニングペーパーを作るというところで、大きな問題があることに気づきました。
 試験の範囲が30ページも40ページもあるのです。それを全部丸ごと写して鉛筆に隠すわけにもいかない。要約せざるを得ない。教科書を読んで、重要なところを抜き出す。でも、それではまだ多すぎるので、書ききれない。だから、「ここで一体何を言おうとしているのか?」ということをつかんで、それを自分のことばで、言いかえて、違和感のないようにしていったのです。
 自分のことばで話の筋を再構成していくということを何週間かかけてやってみると、暗記しようとしたわけではないのにいつの間にか教科書の内容がすっかり頭に入っていました。もうカンニングする必要はありませんでした。そして、テストも生まれて初めて百点近い点数を取ることができたのです。私は、これに味をしめて、全部このやり方で勉強するようにしていきました。そうして今のように、こうやって話したり、文章を書いたり、人の話を聞いたり、本を読んだりすることができるようになったのです。
 今、みなさんに「メモを取れ」とか「要約をしろ」ということを言っているのは、私自身のそういう経験から言っているのです。
 ヨハネ研究の森で、「今日の学習」を毎日書きなさいというのも、その日一日、見たり、聞いたり、考えたり、感じたりしたことをもう一度自分のことばでとらえ返してみなさいということです。メモ取りっぱなし、話聞きっぱなし、やりっぱなしではなく、自分のことばでまとめてみる。
 そうすることで、ヨハネ研究の森にいる生徒はみな、普通では考えられないような本を読んだり、文章を書いたりするようになっていくのです。つまり、学びの達人とはそのようにして育まれていくのです。だから、ヨハネ研究の森では「勉強」(勉めて強いる)ではなく「学ぶ」ことをしていきたいと考えています。
 ヨハネ研究の森で学ぶ本物のヨハネ生になろうと思ったら、ぜひ「メモを取ること」、「振り返って自分のことばでまとめること」を徹底していくようにして下さい。