EXTENSION PROGRAMの報告

 2月21日、ヨハネ研究の森Cルームで東京工業大学−地球惑星科学教授 丸山茂徳先生をお招きして EXTENSION PROGRAMが開催されました。
丸山研究室WEBサイト
  
 今年の共通テーマである「アルフレッド・ウェゲナー」について、学習してきたことの 総まとめになる一日が始まりました。生徒も、この講座を聴講する参加者も丸山先生が 入ってこられるのを今か今かと待ちわびています。
 いよいよ丸山先生が教室にお見えになりました。大下先生が丸山先生とヨハネコースの 紹介をされました。その後いよいよ講座の開始です。
 ヨハネ生は期待に胸を膨らませ、先生の言葉を漏らさずメモしようと、ペンの用意をします。 丸山先生は自分の生い立ちから話し始められました。
 こども時代に、育った町の山の向こうに何があるか興味を持ち、連れて行ってもらったこと。 その山の向こうに何があるか。遠足で海があることがわかったこと。海の向こうに何があるか。 島があること。地球を飛行機で一周したことで地球が丸いことが実感できたこと。いよいよ地球の 中に何があるかに興味を持って、調べ始めたこと。興味の対象が果てしなく広がっていき、 その疑問を解決するために次から次に追及していったことから始まりました。
 そして、地球の中がどうなっているかのお話です。地球の中には鉄の海があること。鉄が溶けて 白銀の世界が広がっていること。その鉄の海に雪が降っている様子。と、聞いているだけで 地球の中についてのイメージが次々と浮かんできます。
 地球の内側から一転して、火星に話題が移ります。
 火星の写真を見せて、観測の歴史、火星の火山、隕石、有人探査の話になります。
 常にヨハネ生のペンは止まることなく動いています。
 話題は地球に戻ります。
 人間が生まれたのはどこか、何者かという命題を示し、それを探求していく話になります。 丸山先生は、グリーンランド、ロシア、コロンビア、チリ、ソロモン島、アマゾン川、レソト、と 世界中を調査した時の写真を見せてくれます。そこで採集した石の標本から生物の歴史へと話が 続きます。いよいよ地球の内部の図を写し、地震波を使った研究を説明してくれました。 生物と人の進化の歴史、化石、DNA、とあらゆる資料から、人の起源を説明してくれました。
 休憩を挟んだ後、人間社会の話題に移ります。
 人間がどのように知識を得ていくか。 社会はどのように構成されているのか。人が生きていくために共同体をどうして作ってきたか。 知恵をどうやって形成してきたか。新しい知識を形成していくためにはどうするか。 仮説を立ててモデルを形成し、データを探し、検証する。この繰り返しで作っていくという 知識形成の奥義を話してくれました。  地球の生物圏の形成、生物の働き、未来において地球がどうなるかの話から、 科学的な考え方、使い方を説明してくれました。科学の発展段階について説明し、 科学的な知識を使っての未来への探求に話題は移ります。
 世界人口が300年前から急激に増え続けたこと、そして永遠に人口は増えないこと、 近い将来、人類の転換点がやってくること、これに対応する方法を考え出さないといけないこと。  現代社会がボーダーレスになり、その度合いはますます大きくなること。 人、物、情報、金の動きがますます大きくなっていくこと。そして、2020年には成長限界が やってくることを話してくれました。その時、エネルギーが枯渇すること、地球は寒冷化の時代に 入ること、だから温暖化は地球環境を考えれば歓迎するべきことであること、この地球環境、社会環境の 変化によって生じる問題は過去に発生したことはなく、この問題を解決する方法を考えることを 宿題としてだされました。
 講義が終わっても、生徒は次々に丸山先生に質問を出し、それに対して先生は丁寧に答えてくれました。
 生きた「ウェゲナー」が語る、息着く暇もなく展開するテーマ、億年単位の時間と宇宙空間を縦横無尽に駆け巡る話題に 充実した時間を過ごした生徒はいつまでも興奮さめやらぬ様子でした。

 また、最後に、当日参加された方の感想をご紹介します。

 今日の講演は、丸山先生が学ばれて来た学問の歴史が地層のように折り重なって いるのが感じられる内容で、感激いたしました。その多岐にわたる高度な内容を わかりやすい言葉で説明していただけると、普段ほぼ休眠状態の自分の脳が、刺 激を受けて喜んでいるのがよくわかります。
 いつも目にしている地図は普遍であり不変であるとどこかで思い込んでいる自分 の頭の固さに驚き、それを億年単位の時空の中でパズルのように大陸をくっつけ たり離したりなさる丸山先生のお話にまた驚き、その話に子供のように一生懸命 ついていこうとしている自分の脳の健気さに、笑いがこみ上げて来るほどの快感 を味わいました。
 先生のお話が特に「子供向け」では無かったことにも感心しました。 「子供だからわからない」というのは子供に対して失礼だと常々考えてきました。 高い目標を与えて「来たければここまで登って来い」といわれているような授業 からは、ある種の清清しさが感じられました。
 将来「こうなりたい」と思える先輩にたくさん出会うことができる幸せを、ヨハ ネ生は享受しているのだということも実感できました。


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