昆虫好きの不登校児だった私が、生命科学の探究を決意するまで(東京理科大学進学 理系男子)


本当の学びができる学校を探して

私がヨハネ研究の森コースに編入したのは、中学3年時の冬でした。それまでの私は、小学生の頃から学校に馴染むことができず、中学生になってからも不登校生活を繰り返していました。その原因の一つとして、テストで点を取るためだけに勉強し、周りと比較され続ける学校生活に嫌気が差したことが挙げられます。

受験期が終わればすぐ忘れてしまうような勉強に、一体何の意味があるというのか。私は学校での勉強に意味を感じられず、趣味の昆虫飼育・採集だけに情熱を注ぐ日々を過ごしていました。しかし、いくら学校が苦手であっても、このまま不登校生活を続けるわけにはいきません。

中学3年時には趣味の昆虫採集を通じ、職業研究者を志すようになっていたので、大学に進学したいという思いもありました。そのためには、高校卒業単位を取得しなければいけませんが、これまでのようなテスト勉強はもう懲り懲りです。

私と両親は、通い続けられるように全寮制かつ、本当に必要な学びだけに取り組むことができる学校を探していました。日本各地へ出向いて様々な学校を見学しましたが、その中でもっとも魅力を感じたのは、このヨハネ研究の森コースです。

学年を問わず生徒が一堂に会する研究室には、専門書がズラリと並び、生徒は物音も立てずにそれぞれの勉強を進めている。この環境でなら、昆虫の研究はもちろん、進学するための勉強にも集中して取り組めるかもしれない。私はそう考え、このコースに編入しました。



趣味の世界から学術の世界へ

入学後は、ほとんど毎日、昼休みや放課後に採集を行いました。ヨハネ周辺は雑木林に囲まれているだけでなく、近隣には田んぼもあるため、昆虫採集には打って付けです。私は興味の赴くままに調査を続け、3年間で400種以上の昆虫を採集し、昆虫目録を作成しました。

また、高校2年時には論文の投稿、高校3年時には論文の投稿と学会でのポスター発表も行い、より学術的な活動を経験することができました。そのような場面では、ヨハネで日々行われている検討や読書、レポート作成の経験が、着実に自分を成長させていることを実感します。

また、私は進路選択を行う上でも、ヨハネから大きな影響を受けています。高校生になった私は、昆虫の調査を行う中で生物多様性に魅せられ、それをもたらす主要因の一つであるDNAに関心を持ちました。これをきっかけに、私はミクロな生物学に関する書籍を読み漁るようになり、高校2年時には合成生物学に出会いました。



生命科学の研究者を目指して

合成生物学は、生物学と工学の学際分野であり、生命を「つくることによって」理解しようとする学問です。共通のスローガンは、リチャード・ファインマンの言葉「What I cannot create, I do not understand(自分で作れないものを、私は理解していない)」。生命の起源に迫ろうとするばかりか、生命を自由自在に設計できる時代を目指すこの分野なら、生命に対する理解を急速に深められるかもしれない。私はそう考え、合成生物学研究の道を志すようになりました。

しかし、ミクロな生物学が扱う現象は目に見えないため実感が持てず、座学ばかりでは物足りない。そう感じていた私に、ある主任研究員の先生は、ゲノム科学について学べるサイエンスキャンプを紹介してくださいました。

私はそのキャンプに参加したことによって、教科書中の存在でしかなかったDNAが生命のソフトウェアであることを、初めて実感することができました。生命をミクロな視点から捉え、複雑な機械としての生命を理解したい。私はこの機会を通して、改めてその思いを強くしました。



自ら学び、難問に立ち向かう

このような出来事を背景に、私は現在の進路を選択しましたが、ヨハネで読書習慣を身に着け、サイエンスキャンプを紹介していただいていなければ、おそらく昆虫学者を目指していたはずです。

寮生活と聞いて閉鎖的な印象を持たれる方は少なくないでしょうが、私はヨハネに入学したおかげで視野が大きく広がり、多くの物事に関心を抱けるようになりました。もちろん今でも昆虫は大好きですが、こうして関心の幅を広げられたことは、大きなプラス要素になってくれたと思います。

私はこのヨハネで、学びが他者から与えられるものではなく、自ら貪欲に進めるものであることを知りました。大学入学後も、「大学は自ら学ぶ場所。消費者にはなるな」という恩師の言葉を胸に日々研鑽し、生涯をかけて「生命とは何か」という難問に立ち向かう所存です。

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